Gold nanofin

金ナノスリットによる光学素子

 ナノスケールの厚みの金を数百nm周期で並べた構造である金ナノスリットが光に大きな位相差を与えることが近年明らかにされ,注目を集めている.本研究室ではこの金ナノスリット構造を用いた光学素子の開発を行っている.

 金ナノスリットの位相差発生の原理

 光が金ナノスリットを透過するとき,スリットに平行な方向の偏光(TE偏光)はスリット中を導波管モードで反射しながら進むため,結果として波数が小さくなり位相が進む.一方スリットに垂直な方向の偏光(TM偏光)は,スリット内を表面プラズモンとして伝搬するため波数が大きくなり位相が遅れる.それぞれの偏光で逆の位相変化が生じるため,大きな位相差が得られる.

 金ナノスリットによる軸対称偏光子

 近年科学計測や微細加工の分野で軸対称偏光が注目されている.軸対称偏光とはビーム断面の偏光方向が軸対称に分布する特殊な偏光状態である.軸対称偏光の一種であるラジアル偏光の偏光分布をFig. 1に示す.その特殊な偏光分布や高い集光性からレーザ加工や光ピンセットなどに応用されている.軸対称偏光の発生には光学結晶などを用いた軸対称偏光子が用いられるが従来法では小型化が困難,可視光で使用できないといった問題点があった. 

 そこで本研究室ではプラズモニックナノスリットを用いたマイクロスケール軸対称偏光子の開発を行っている.光学結晶の代わりにのように金ナノスリット構造による複屈折光学素子を配置することでFig. 2のように直線偏光を軸対称偏光に変換する.この原理を用いることで10〜100 μm程度の大きさで軸対称偏光子が実現でき,多数並列化させることも可能である.

 これまでに金ナノスリット構造について電磁場解析を行い,スリット構造の最適設計値を求めた.さらに,電子線リソグラフィを用いて実際に光学素子の製作を行い,解析結果が実測値とほぼ一致することを確認した.

 金ナノスリットとMEMSアクチュエータによる光位相変調素子

 金ナノスリットで得られる位相差の量が,スリットの空隙の厚みに依存する性質があることが知られている.この性質を利用した,MEMSアクチュエータを用いて金ナノスリットを1つおきに上方向に動かし空隙の厚みを変えることで(Fig. 1),位相の変調量を電気的に変えられる光位相変調素子の開発を現在行っている(アニメーション: 光位相変調素子の駆動イメージ.左が斜め上から見た図,右が断面図). 現在は熱バイモルフアクチュエータを用いるものと,静電アクチュエータを用いるものの2種類の開発を行っており,プロジェクターや電子ホログラフィ(立体映像)用の表示素子への応用が将来的に期待されている.

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